中洲川端で昭和28年創業、伝統の水炊き
博多味処 水たき いろは博多本店に味の真髄を聞いた
温かい食事が恋しくなる冬。中でも鍋料理は、寒い夜の定番ともいえる。数ある鍋料理の中で、歴史と人気が高いのが、博多名物の水炊きだろう。
水炊きとは、特に味付けがされていない水やお湯に鶏肉や野菜などの具材を入れ、煮立たせる過程で具材から出汁をとり旨味を引き出す鍋料理のこと。
全国で美味しい水炊きを提供する店は数あれど、やはり博多を訪問して本場の水炊きをいただくことにこそ、大きな意義と醍醐味、そして味わい深さがある。
そこでこのたび取材させていただいたのが、『博多味処いろは』。水炊きの名店で、観光客のみならず地元の人たちにも愛され続ける人気店でもある。
水炊きの歴史とお店の伝統、そして味のこだわりについて、お話を伺いました。
博多の家庭料理として根付いていた水炊き文化を継承。
『博多味処いろは』の創業は、1953(昭和28)年に遡る。初代店主が大阪の『いろは』にて修行を重ね、その店名をいただいたことがきっかけだという。ただし当初提供していたのは、今日における同店の2枚看板の一つ「すき焼き」のみ。これが毎日のように行列ができるほどの盛況ぶりであった。そうした人気を受けて店舗をビルに建て替えたのが、1965(昭和40)年。これまで以上に多くのお客様に愛される店として再出発し、現在の同店の代名詞となる「水たき」が生まれた。
水炊きをメニューとした背景について、四代目店主である原田隆史さんは「もともと水炊きは博多の家庭料理で、それぞれの家にそれぞれの水炊きというものがありました」と地域ならではの水炊き文化について語る。「すき焼きをメインに提供していた頃は牛を一頭買いしており、実は食材のロスも少なくなかったと聞いています。
そこで、このロスをなくすために鶏肉を扱い始め、博多の食文化の伝統でもあった水炊きを提供しながら試行錯誤を重ね、現在のような形ができあがりました」
ではなぜ鶏肉なのかという点について、「九州はそもそも鶏肉大国なのです」と原田さんが解説する。博多の水炊きのほか、久留米の焼き鳥、中津の唐揚げ、宮崎の地鶏炭火焼き、延岡のチキン南蛮など、九州には鶏肉を使った郷土料理が多い。養鶏場の数や鶏肉の消費量も多く、1世帯あたりの鶏肉購入量※は、熊本市、福岡市、大分市がトップ3を占めるほどだ。こうした背景からも、水炊きの出汁として鶏肉を扱うことは至極当然のなりゆきだったともいえるだろう。
材料にこだわり、長きにわたって守られてきた伝統の味。
秘伝のスープや厳選の鶏など、店頭に劣らぬ水炊きをご家庭で楽しめる冷凍セットも人気。
観光客はもちろん、地元の人々からも愛されているという『博多味処いろは』の水炊き。そのこだわりにも迫った。
「まず鶏肉ですが、鶏肉大国である九州は鶏の種類も実に豊富であるものの、水炊きに合う種類は、意外にもわずかしかありません。一般的に水炊きとの相性が良いとされているのは赤鶏ですね。
当店ではその赤鶏の中でも佐賀県産のみつせ鶏を使用しています。味は言うまでもなく、柔らかさと弾力が水炊きにとても適した品種です。お野菜は季節に応じて旬のものを厳選しておりますが、特徴としてはキャベツをご提供していることでしょうか。おそらく鍋料理の定番といえば白菜だと思いますが、キャベツは白菜よりも水分量が少なく、スープを吸うことでより美味しくなります。
また、通年でできるだけほうれん草はお出しできるようにしています。そして何より欠かせないのが、自家製ポン酢です。福岡県の醤油をベースにした特製醤油と山口県産の香り豊かな萩みかんを調合した門外不出の味です」(原田さん)
こうした素材のこだわりを大切に守りながら、今なお高い人気を誇る同店の水炊き。実際に足を運んで味わっていただくのがベストだが、遠方で訪店が難しいという方には、この伝統の味をご家庭で味わえる『いろはの水たきセット』の通信販売がお薦め。スープや鶏肉、ポン酢などが揃った冷凍セットで、開発には三年の月日を要したという。「冷凍セットは、野菜以外の鶏肉やミンチなども店で出している材料と同じものになります。あとはご家庭でお好きな野菜をご用意していただくだけで、当店の水炊きを気軽に楽しんでいただけることでしょう。
好きな野菜を入れられるのがご家庭での醍醐味ですから、野菜をたくさん食べるきっかけにしていただけると嬉しいですね」と原田さん。同商品は、公式HPから直接購入することができ、贈答用も選ぶことができる。
『博多味処いろは』の博多本店には、博多が生んだグラフィックデザイナーである故西島伊三雄氏が「博多祇園山笠」のようすを描いた壁画を楽しむことも。店内の所々に同氏の作品があるため、来店時に探してみるのも良いだろう。
伝統の「水たき」の手際をレクチャーいただきました
鶏の旨味が詰まった濃厚スープでいただく絶品水炊き
まずはシンプルに、みつせ鶏からとった白濁鶏がら出汁を湯呑みに注ぎ、柚子胡椒と塩で味わう。次に秘伝の鶏ミンチを鍋に入れ、自家製ポン酢で堪能したのち、最後に野菜を入れることで、ようやく完成。一般的な鍋料理とは異なり、こうして順を追って味の変化を楽しめるのが、『博多味処いろは』ならではの「水たき」の最大の特徴でもある。
鍋料理の最後の醍醐味といえば、お肉や野菜の旨味がしっかり滲み出たスープを使った〆の一品。「水たき」の〆は、雑炊が定番。あらかじめ取り分けておいたスープを戻し、白米を卵でとじれば、濃厚な雑炊の出来上がり。スープの最後の一滴、米の最後の一粒までもが忘れられない絶品の味わいだ。
美味しさの秘訣 ワンポイント!
オンラインショップで購入できる「いろはの水たきセット」を、ご家庭で120%楽しむ秘訣。
「いろはの水たきセット」なら、ご家庭で『博多味処いろは』の「水たき」が堪能できる。 鶏肉やスープ、ポン酢などは全て店頭で提供しているものと同じで、あとは好きな野菜と一緒に味わうだけ。せっかくなので、より店頭の味に近づけるための秘訣を伺った。
一つ、いきなり全ての具材を詰め込まない。
まずは鶏肉の旨味を引き出したスープを一杯味わい、ミンチを投入。 その次に野菜を投入し、順を追って変わる味わいを楽しみたい。
一つ、白菜よりもキャベツがお薦め。
白菜は水分を多く含んでいるためスープを薄めてしまう恐れも。 そのため、逆にスープを吸うことで旨味が増すキャベツを推奨。
一つ、しらたきは要注意。
こんにゃく類はお肉を堅くするため、春雨などの代用食材がお薦め。 代用できない場合は、最後に投入するのがお薦め。
いろは 博多店
- 〒812-0026
- 福岡県福岡市博多区上川端町14-27 いろはビル
- TEL:092-281-0200
- アクセス::地下鉄中洲川端駅からすぐ
- 営業時間:火曜日~土曜日 18:00~23:00 (ラストオーダー22:00)
- 日曜日 18:00~22:00 (ラストオーダー21:00)
- 定休日 月曜日